オデッセイ

広中平祐は,数理科学の探究を通じて学問と社会を結ぶことの重要性を生涯にわたり説き続けました. その思想と歩みを知るための貴重な資料として,以下の二つの記事が挙げられます.

一つ目は,アメリカ数学会の学会誌『Notices of the American Mathematical Society』に掲載された インタビュー「Interview with Heisuke Hironaka」 ( AMS Notices, Vol. 52, No. 9, 2005, pp.1010‒1019)です. ここでは,研究の原点や教育への理念,さらには「数理科学の可能性」について, 広中自身の言葉で語られています. その柔軟な思考と人間味あふれる言葉から,彼の学問観の深さと広がりをうかがうことができます.

二つ目は,日本数学会の機関誌『数学通信』に掲載された, 小田忠雄氏による紹介記事「広中平祐会員のレジオン・ドヌール勲章受章によせて」 ( 数学通信 第8巻 第4号, 2004, pp.20‒24)です. この記事では,広中の長年にわたる研究・教育活動の功績と, その社会的意義が温かく描かれています. とくに,次世代を育てる教育への情熱や, 数学を通じた国際的な文化交流の精神が印象的です.

これらの記録は,広中平祐が歩んだ「数理科学のオデッセイ(探求の旅)」を伝えるとともに, 数学が社会の中で果たすべき役割を今に問いかけるものです.